西東京稲門会・散策の会 例会報告 

2017年4月    秩父札所 

 

25 )  晴れ

 

    おだやかに晴れたうららかな春の日である。小平稲門会の松谷さんが久しぶりに参加して、参加者は11名である。

所沢から乗った電車は遠足に行く小学生の団体で満員であった。彼らは高麗駅や吾野駅で下車して行ったので、その後はゆっくり座ってゆくことができた。西武秩父駅には9時40分頃に到着した。10時5分発のバスに乗って、「札所20番前」で降りたのは10時20分頃であった。

 

    バス停から300mほど畑中の道を行くと20番札所・岩の上堂に向かって下る石段があり、木々の間にお堂の屋根が見えている。石段の両側にはエドヒガンザクラ、ヤエザクラ、ツツジ、アヤメ、ムラサキハナナなどが咲き揃い、春爛漫といったところである。

聖観世音菩薩が祭られた観音堂は、秩父札所の中でも最も古い建物で、江戸初期に造営され、元禄年間に内部が改修され、宝永年間に彫刻の補修を行ったという。観音堂の前の大きな紅葉の新緑がまぶしかった。観音堂のすぐ下を荒川が流れている。新緑の木々に隠れて見えないが、涼やかな音が聞こえてくる。

私は30年ほど前の昭和61年4月29日に、ここを訪れ納経している。納経所にいる人にその納経帳を見せたところ、これを書いたのはその方のお父さんで、20年ほど前に亡くなられたとのことであった。

 

   岩の上堂への石段   新緑の紅葉の中の観音堂      観音堂の内部

 

    岩の上堂をあとに、シジュウカラの鳴く雑木林の中の道を行くと、やがて林が切れて視界が開けた。左手にどっしりと構えた武甲山を望むことができた。畑の中の道を行くと道端に巡礼者のための道しるべ石があったり、野菜の無人直売所があったりする。朝採れのタケノコ、中くらいのが1個500円、小さいのが200円、小さいのが2つで300円であった。お買い得ではあるけれども荷物になるというので買わない人が多かったが、2人の方がお買い上げになった。

 

    畑中の道から県道72号線に出て左折するとすぐ右手に21番札所・観音寺がある。大正12年(1923)に隣接した小学校の火災により類焼したが、その後廃寺を移築したのが現在の本堂である。本尊は聖観音菩薩である。

 

      巡礼道の道標       古い道しるべ石     21番札所・観音寺

 

 

    21番札所から1.4km、車の往来の多い県道を30分ほど歩く。時間も正午に近くなって日差しも強く、かなり暑くなってきた。「札所22番入口」のバス停のそばには赤い頭巾を被った石の地蔵さんが鎮座していて、地蔵さんと秩父公園橋の橋柱の間に武甲山がデンと構えている。

ヤエザクラとネギ畑の中の参道を行くと珍しい茅葺の仁王門が現れる。仁王門には阿吽の仁王像が安置されているが、怒りの形相の仁王様ではなく、童顔の可愛い仁王様である。

22番札所・童子堂は江戸時代中期の華麗な建築物で、正面の唐戸には風神雷神、迦陵頻伽の見事な浮彫を見ることができる。

 

   武甲山とお地蔵さん   22番札所へ向かう参道 茅葺の仁王門
 22番札所・童子堂の観音堂     阿形の仁王様      吽形の仁王様

 

    22番札所から野原の中の道を行き県道に出たところが、秩父駅から秩父公園橋を渡ってミューズパークへ向かう道と県道との交差点である。そこに大きな巡礼道の案内板が立っていたが、それによると次の23番札所までの所要時間が40分となっている。しかも巡礼道はかなり急な細い山道になっている。時間は12時近くなっていて、昼食場所に予定していたミューズパークに着くのは1時過ぎになりそうなので、どこ  かで昼食にしようと思ったが適当な場所がなかったので、ともかく歩き始めた。

急な山道ではあるが、よく踏まれた歩きやすい道なのでゆっくり登る。林の中なので直射日光は遮られて、風が気持ち良い。蛇行して登る車道と2回ほど交差してゆくと、やや緩やかな車道に出て、前方右手に公園が見えてきた。「四季の百花園」という公園で、サクラが咲いているし、芽吹いたばかりの新緑も美しい静かな公園である。四阿もあるのでここで昼食にした。

 

        四季の百花園        満開の桜の下で

 

    四季の百花園のすぐ上が23番札所・松風山音楽寺であった。この寺を開いた13人の聖人が、この山の松風の音を菩薩の音楽と聞いたのがこの寺の名前の由来であるという。音楽を志す人たちが多く訪れている。

山道をかなり登って来たので、観音堂からの眺めは抜群で、秩父市街が一望できる。観音堂の前に鐘楼があり、その鐘の音は大変美しい。大男のNさんが突くと耳を聾するばかりの大きい音がするが、女性のUさんが突くと優しくひそやかな音がした。

明治17年に農民約3000人が武装蜂起し、音楽寺に集結して梵鐘を乱打したあと秩父市内に乱入した、いわゆる「秩父困民党事件」が起きた。秩父困民党事件を記念する碑が鐘楼の横に建てられている。

 

     松風山・音楽寺        観音堂    秩父困民党事件の碑

 

    音楽寺に隣接して秩父ミューズパークがある。ミューズパークは自然豊かなテーマパークで、スポーツの森、音楽堂・野外ステージ、薬用植物園、散策コースなどがある。ミューズパークの中も歩く予定であったが、音楽寺への山道が予想外にきつくて疲れたので、ここからバスで帰ることにした。時間は1時半ころであるが、次のバスは2時27分発なので1時間ほどの待ち時間がある。梅林の中の草むらに寝転んだり、四阿でおしゃべりをしながら過ごしたが、爽やかな自然の中でのひと時は実に贅沢な時間であった。

 

    西武秩父駅には3時前に戻ってきた。西武秩父駅とお花畑駅の間にあった仲見世が全面的に改修されて、「西武秩父駅前温泉 祭りの湯」として4月24日にオープンした。日帰り温泉の他に食事や買い物もできる店が入った新しい観光施設である。そこで我々も温泉で汗を流して行こうというになったが、オープン2日目ということもあって、温泉の入場券売り場には長い列ができていた。入浴を諦めて一杯やろうということになったが、まるで高速道のサービスエリアのような雰囲気だったので、これも諦めて駅前のむかしながらの蕎麦屋に入った。ここはやや古ぼけた店だが、客は我々8人だけだったので落ち着いて静かなのが良かった。まずギンギンに冷えた生ビールで喉を潤し、次にこの季節限定の生酒を賞味した。おかずはフキ味噌、ノビルの酢味噌和え、菜の花のおひたし、マイタケのてんぷらなど山菜料理づくし、そして〆はこの店自慢のクルミ蕎麦である。うまい酒にうまい肴、大満足で店を出た。

女将は巨大資本による新しい観光施設に客を奪われるのではないかと心配していたが、こういう店にはぜひ頑張って欲しいものである。また秩父に来たときはこの店に来よう。

 

 

   

 

 

散策に参加した俳句クラブの人たちの句です。

摘み草や 仲間に遅れ 遍路みち            金子正男

若葉風 つんざく鐘は 無住寺               同上

武甲山 巡礼道の 桑芽吹く         志賀 勉

 

散策には不参加でしたが松尾さんからは早慶レガッタを観戦したときの句を頂きました。

レガッタや墨堤に買ふ桜餅           松尾良久

 

 

 

参加者  金児利行、金子正男、梶原松子、小島恕雄夫妻、志賀 勉、滑志田隆、原田一彦、

松谷富彦、臼井静江、中村仁美  以上11名

写真と文 小島恕雄