西東京稲門会・散策の会 例会報告 

2017年10月    陣馬街道 

 

1024 )  くもり ときどき 晴れ

 

               夕焼小焼

              夕焼小焼で日が暮れて        子供が帰った後からは

       山のお寺の鐘が鳴る          圓い大きなお月さま

       お手々つないで皆帰ろ      小鳥が夢を見る頃は

       烏と一緒に帰りましょう             空にはきらきら金の星

 

    日本人なら誰でも知っている、誰でも歌ったことがある、この童謡の作詩家・中村雨紅の生まれ育った八王子市上恩方町が今回の目的地である。中村雨紅・本名高井宮吉は明治30年(1897年)、東京府多摩郡恩方村上恩方で、宮尾神社の神職の三男(次男という説もある)として生まれた。東京青山師範学校を卒業し、日暮里の小学校の教師となったが、上恩方から八王子駅まで16kmの道を歩き、そこから電車に乗って日暮里まで通ったという。1921年に童謡「お星さま」を児童文学雑誌「金の船」に発表したのを皮切りに、多くの童話・童謡を発表した。

 

    23日の深夜から明け方にかけて台風21号が関東地方を通過した。23日は台風一過の晴天であったが強風が吹き荒れた。そして24日は曇り空ではあったが、風もおさまり、まずまずの散策日和となった。

1月の馬込文士村以来の参加という斉藤氏を含め9名が三鷹駅に集まった。

高尾駅から陣馬高原下行のバスの乗るのだが、バス停前には遠足の小学生の団体がいて、やはり同じバスに乗るという。大変な混雑になると思ったが、臨時バスが出たのでゆっくり座ってゆくことができた。狐塚バス停で下車したのは10時頃であった。 陣馬街道に沿って北浅川が流れているが、10月は雨の日が多かった上に、前日の台風で大雨が降ったため、水量が多く、猛烈な勢いで流れていた。

 

    バス停から80mほど先に『興慶禅寺』と書かれた石碑が立っていて、そこを右折して畑の中の道を進む。真っ赤に熟した実をたわわに付けた柿の木や大きな栗の木が実りの秋を感じさせる。しばらく行くと道は急傾斜となり興慶寺に着いた。百段ほどの急な石段を登ると趣のある山門があって、その奥に本堂と庫裏が並んでいる。本堂は屋根の葺き替え工事中であったが、小さな山村にしては立派な建物である。

 

   興慶寺 山門前の石段      興慶寺 山門   興慶寺 工事中の本堂

 

    興慶寺の周辺には色々な秋の花が咲いていた。春や夏の花に比べるとひっそりとした感じではあるが、そこが秋の花の美しさでもある。山門付近から振り返ると、眼下に陣馬街道が走り、街道に沿って人家が点在している。その向こうには低い山が連なっていて、典型的な山村の風景である。

 

       秋海棠

        竜 胆

        南 天

 

    興慶寺から陣馬街道に戻り、陣馬高原下へ向かって約1.5km、30分ほど歩くと宮ノ下バス停に着いた。バス停のすぐ近くに中村雨紅の墓がある。中央に「高井家之奥津城」と書かれた墓石が立ち、その左横に「高井宮吉の墓」と書かれた墓石が立っている。雨紅の墓の横に 「我によき友のあり そはみな うたのおかげなり 歌はありがたきかな」 という自筆の歌が刻まれている。

 

中村雨紅の墓

     雨紅の歌碑

 

    宮ノ下バス停から300mほど行くと夕焼小焼バス停があり、そこから宮尾神社へ行く近道がある。急な階段を上ると山道となる。竹林の中の薄暗い道である。しばらく行くとまた急な坂道となり、最後に20段ほどの急な石段を登り、石の鳥居を抜けると宮尾神社である。正式名称は「住吉神社琴平神社合社」といい、創建は元暦年間(1185年)であるという。境内に浅間社、向う森に伊勢宮の末社をもつ。

 

    宮尾神社への道

     石段と鳥居

       本 殿

 

    陣馬街道を挟んで宮尾神社の向かいに「夕やけ小やけふれあいの里」がある。農作業の体験、ポニー乗馬、昔の遊びの体験、キャンプ場、バーベキュー、川遊びなどが楽しめる体験型の娯楽施設である。宿泊施設やレストランもある。我々はレストラン「いろりばた」でとろろそばを食べた。美味であった。

 

    食事のあと夕焼小焼館内にある中村雨紅の業績を紹介する展示と前田真三ギャラリーを見学した。前田真三は1922年(大正11年)に下恩方に生まれた写真家で、日本列島縦断撮影旅行を行った。その時北海道の美瑛・富良野の素晴らしい風景に出会い、多くの作品を生み出した。このギャラリーには美瑛、富良野で撮影された素晴らしい写真が多数展示されていた。

 

    13時32分のバスに乗ろうと夕焼小焼バス停で待っていると、高尾駅であった小学生の団体と一緒になった。今度は臨時便がなかったので、高尾駅までギューギュー詰めの状態であった。しかし引率の先生の指示で我々は座らせてもらったので問題はなかった。

 

宮尾神社の歌碑

 雨紅の墓の横にある歌碑

 

               

 

俳句クラブの方から俳句を頂きました。

 

すすきゆれ 夕焼けの里 蕎麦すする       金子正男

 

初紅葉 夕やけ小やけの 里の唄   志賀  勉  

 

参加者  金子正男、梶原松子、小島恕雄夫妻、斉藤晧一、志賀 勉、水野聰夫妻、安村長生

  以上9名

写真と文 小島恕雄